善行の話
こんにちは。
こんばんは。
おはようございます。
flyingsapceshipと申します。
こちらでは好きなもの、きらいなもの、気になるもの、考えたことがあれば、私ならではの少ない語彙と拙い文章による書置きスタイルでお送りしています。
善い行いをしたら覚えておくべきなのだが、基本的に私は優等生で、だいたいの時が真面目なので、たくさんありすぎて覚えていないのだろう。
そのためか、逆にルールに反したふざけたことをしたことの方がよく覚えている。
一件だけ鮮明に思い出せるのが、学校に友達がいなかった大学生活の帰り道のことだ。
学費と携帯代は親に負担してもらっていたが、その他の生活費は自分のアルバイト代と奨学金でやりくりしていたため、学校まで2駅の定期代を惜しんで自転車通学をしていた。
約40分の道のりの途中には、商店の並ぶ駅周り、住宅街、とさまざな景色があるが、とにかく高低差のある地形だった。急勾配の坂道が3〜4ヶ所あった。
その中でも特に急な、砂利を伴った坂道だ。
行きは下りをノーブレーキで落ちるように進むが、帰りは最後までペダルを漕げるか漕げないかは賭けになるほどだ。
私はその坂道に差し掛かり、今日は漕ぎ切れるか、と考え始めていた。
坂道の真ん中らへんで、小学4〜5年生くらいのよく日に焼けた男の子が、自転車の前でうずくまり、ペダルの周りを覗き込んでいた。
すでに大学生で20歳を過ぎていた私は、「未成年に容易に近づいては通報される恐れ」をすでに持っていた。そのため、視界の端に映る少年を無視しようとした。
坂道を、重い沈黙を守りながら、ペダルを踏み込むことに集中しようとした。
しかし、なんだかんだ私の根底にいる『真面目な優等生』は視界の端の少年の状態を把握していた。
自転車のチェーンが外れていたのだ。
実は、数日前の通学中、その急勾配の坂道をノーブレーキで下りていた時、私も自転車のチェーンが外れたのだ。
たぶん、坂道のスピードに自転車の歯車がなんらかの作用で追いつかず、勢いで外れたのだ。
その時は30分以上誰も通らず、私はひとりでなんとかチェーンをはめ込んだ。自転車の油で真っ黒に汚れた両手のまま大学に向かったが、それを聞いて笑ってくれる友達もいなかった。
「あぁ、直し方なら知ってるな」と思った。
自転車を降りて、通報される覚悟で声をかけた。
私「チェーンが外れたの?」
少年はハッとしたように振り向いて、私を見て、黙って頷いた。
私は「触っていい?」と聞いてから、数日前一度やった作業をした。一回やったということと、自分の自転車より小さかったからか、すぐにできた。
一応その場で試してもらったが、「家に帰ったら親に見てもらって。危ないかもしれないから、今日はスピード出し過ぎないようにして」と言って少年に自転車を渡した。
少年はぶっきらぼうに「ありがとう」と言って自転車に乗って去って行った。
学校帰りのその日、会話をしたのはその少年が最初で最後だったと思う。
もしかしたら、その日、私が誰かと一回でも話がしたかっただけなのかもしれない。
どの程度の親切心だったのかも覚えていない。
思い返してみて、本当に見返りの無い善行というのは、タイミングもあるなと思った。
本日も読んでいただき、ありがとうございます。
愛しています。