傘を持った日について
こんにちは。
こんばんは。
おはようございます。
flyingsapceshipと申します。
こちらでは好きなもの、きらいなもの、気になるもの、考えたことがあれば、私ならではの少ない語彙と拙い文章で書き殴っていくスタイルでお送りしています。
本日もまた、親切な友人のおかげで得たテーマでお送りします。
本当にありがたい。まだまだ書いていけそうです。
「天気」にまつわる話です。
小さな頃から小さな子供だった。
一人暮らしの準備で出てきた小学校の身体測定の記録を見たら、入学時の身長は1mも無かった。
体重もその身長に見合った、もしくはやや少ないので、ただ小さかった。顔は可愛くないので、ただひたすら小さい子供だった。
自分の記憶と、姉の証言によって補われての出来事だが、4歳に満たないくらいの頃だろうか。
母のお腹に妹がいて、姉も一緒に近くのスーパーに向かうときだった。
そこまで強い雨ではないが、雨が降っていて、坂道では雨水がサラサラと流れていたのを覚えている。
その当時住んでいた場所は、丘に段々畑のように住宅が並び、所々にまだ鬱蒼とした森があった。小さく急な坂道が丘を縦に通り、歩道がまだ無い狭い二車線道路が丘の周りを囲んでいた。
その丘から少し歩けば、国道があり、その向こう岸には駅に続く賑やかな街が広がっていた。
雨の中、狭い二車線道路で小さい子供と妊婦が歩いていても、車は遠慮なく通り過ぎるため、我々は肩を縮めて、傘の先を民家の塀に擦り付けながら進んでいた。
車が通るたびに強い風と雨水が顔にあたり、4歳くらいの私は恐怖していた。風と水でこんなに強い圧迫感なのだから、車に当たったら私なんかなにも残らない、と思っていた。同い年の子供に比べて小さいため、日頃から大人にそう脅されていたのかもしれない。
近くに国道があるので、時折、狭い道にも関わらず、大きなトラックも通った。
あっという間に傘が煽られ、重たい雲で曇った空を見た。
私の前を歩いていた姉の叫ぶ声が聞こえた。
「おかあさん!!(flyingspaceship)浮いてる!!!」
トラックによる強い風を傘がまともに受けてしまい、4歳未満の小さい子供は浮いたそうだ。
そのあとの私の記憶は曖昧だが、姉と母によると、そのままひっくり返って転んでドロドロに濡れることになったが、あまりにショックだったのか、泣いてはいるものの黙って呆然としていたそうだ。
小さい子供なら、ままあることかもしれない。
ついこの前まで、大人になった私はそう思っていた。
先日、友人とライブハウスに行くために渋谷で待ち合わせをした。
小雨が降る日で、その日もそこそこ風が吹いていた。
私が今使っている傘は、UNIQLOで4年くらい前に買った。青くて、今の私と対比してもやや大きい傘だ。人混みで傘を差すことが少ないのと、大は小を兼ねるので、大きい傘が好きだ。
渋谷は渋谷駅を中心に、坂道が集中し、ゆるやかな蜂の巣状の地形だ。
青山学院大学のほうから、渋谷に向かって歩いていた時だ。風は渋谷方面から強く、断続的に吹いていた。
大きな傘を持って、家路につくサラリーマンの列を逆行していた。
待ち合わせ時間には充分余裕があったこともあり、相変わらずなんの役にも立たない絵のことなどを考えながら、注意力は多分に散漫していた。
気分はとても穏やかで、注意力どころか戦闘能力も完全に封印されていた。
突然の強い風に、青い大きな傘が煽られ、私の腕は強引にひっぱられた。
傘はひっくり返ることなく、うまく風を掴んだ。
こちらに向かって歩く50代くらいの、上品なスーツ姿の男性の口が「あっ」と動くのを見た。
30歳の小さい大人が、真顔で一歩後ろにステップを踏んだ。
上品なスーツ姿の男性は少し笑いながら、真顔の私とすれ違った。
大人になっても、傘を持って宙に浮ける。
注意力と戦闘態勢の張り詰めた気持ちを、緩めてみたらいい。
本日も読んでいただき、ありがとうございます。
愛しています。