宇宙船と砂漠で足跡

こんにちは。 こんばんは。 おはようございます。 flyingsapceshipと申します。 こちらのはてなブログでは好きなもの、きらいなもの、気になるもの、考えたことがあれば、私ならではの少ない語彙と拙い文章による書置きスタイルでお送りしようと考えています。

幻覚を見たときのこと

こんにちは。

こんばんは。

おはようございます。

flyingsapceshipと申します。

こちらでは好きなもの、きらいなもの、気になるもの、考えたことがあれば、私ならではの少ない語彙と拙い文章で書き殴っていくスタイルでお送りしています。

 

私は就活を始めるのが遅かったほうだ。

理由は簡単だ。『テンションが上がってない』からだった。

車の運転免許に関しても、テンションが上がらないことを理由に取っていない。

悪事について - 宇宙船と砂漠で足跡

 

アルバイト先の他大学の同級生ふたりは順調に就活を進めており、ひとりはひとつ内定が出ていた。

「どうすんの?このままここに就職するつもり?」

その同級生ふたりに母親のようなお叱りを度々受けたが、私は

「テンションが上がれば真面目にできるから大丈夫だよ〜(^ν^)」

と一貫してヘラヘラした紙細工のような態度を崩さなかった。

 

ここまでだと、私は完全に『短絡的』かつ『浅慮』な怠け者にしか見えないと思う。しかし、これにも実は理由があった。

就活にはお金がかかる。

長期間、バイトと学校(卒論)と就活をバランスよく要領よくこなす自信が無かった。生活費を稼ぎながら、さらに時間と資金を就活に充てる、というにはせめて準備金は必要だったのだ。だらだらと決まらない就活をして、精神と資金両方で潰されるのはごめんだった。

だから、ギリギリまでバイトで稼げるだけ稼いで、就活は短期間で済ませたかった。

 

そんなわけで、ようやくテンションが上がった頃、時期的にはほぼギリギリで、この期間に決まらなければ卒業後、無職は確実といわれる時期に、懸命に、真面目に就活を始めた。月に100時間以上入っていたバイトも、かなり削った。

 

例え短期間であっても、できる限りのことを全力でやらなけば、あとがない。

そう思って、かなり追い込まれていたところはある。

しかも、自分の大学の就職サポートセンターでは、『まだバイトしながら就活してんの?』などと言われ「バイトしないと家賃払えない」と言ったら、『普通仕送りとかあるでしょ?』ときた。

母校の文化でいう『普通の仕送り』とは、『親から20万前後』が大概で、それに満たないのは「ほぼネグレクト」と同義のような目で見られた。就職サポートセンターの人間にしても、その母校出身の身分であるがため、多様な文化を知らない狭量さで「サポート」をする手厚さだった。『こいつらはクソの役にも立たない』と思った。

『もし就職できなかったら大学の校舎から飛び降りてやる』とも思った。

 

そんなややギリギリの精神にリクルートスーツを着せただけの存在だった。そのため、就活以外での判断力がかなり落ちていた。

 

ある日、渋谷あたりで就活を終えたとき、とある友人から連絡が来た。

『いまどこにいる?私、表参道にいるんだけど、ご飯食べない?』

そんな内容だったと思う。

ただ、この友人はかなり曲者だった。

高校時代から、かなり自分に夢見がち、さらに現実の自分のギャップにメンヘラ気味になり、周りの『そんなことないよ』を期待するタイプだ。高校では複数の友人の中のひとりだったので、特に害に思っていなかったが、対面では確実にHPが削られる。

そこまでわかっていながら、私は了解の返信をした。

判断力が鈍っていたのと、2年くらい会っていなかったので『成長したかも』という期待と、年上の社会人以外と話をしたかったのだ。

 

会ってみると、相変わらずのテンションでかなり距離が近く、「あぁアメリカ人に憧れているのかな」と思わせた。

彼女もどうやら今も就活中らしい。

私は「えっ?」と驚いた。彼女は専門学校を卒業し、どこかで働いていたと人から聞いていたからだ。どうやら働いていたのもアルバイトで、就職はしていなかったらしい。

 

色々話をしていたが、そのほとんどは覚えていない。神宮前交差点に来た時、彼女が言った言葉だけ、よく覚えている。

 

「やっぱ就活してみて思うのはさー、面接行ってみても社会人経験ない学生とか見ると、あーこれはダメだな、って私でもわかっちゃうんだよね。

それに企業だって、そんな学生なんかより、私みたいに専門卒業して、社会知ってる人間の方が求めてると思うんだー。やっぱどこも即戦力?欲しいよね?」

 

私は、「海でふたりで船を出して、沖でひとりを海に落とせば完全犯罪」という話が頭をよぎり、神宮前交差点の大波のような人混みを掻き分けながら、都会のスピードで明治通りを行く車の影を横目に、「こいつをここで後ろから道路に向かって蹴り飛ばして、全速力で逃げれば」と考えていた。絶対に完全犯罪にはならない。

 

なんとかその衝動をこらえ、目的の飲食店についた。どこをどう行ったのか、全然覚えていない。その間の会話も、私はどう返事をしていたのかも覚えていない。

 

飲食店で、真正面に彼女の顔を見ながら、なにかを食べた。全然味がしなかった。彼女はアメリカ製の顔のバランスがおかしいオモチャのように、首を揺らしながら、相変わらず自分の夢見る自分の話を、まるで、それが世間の声のように話をしていた。

私はたぶん唸るような相槌だけ打っていて、そのうち頭がぼうっとして、視界がぼやけてきた。すると、驚くべきことが起きた。

 

目の前の女の顔、いや頭部が、首と肩の大きさを無視して、どんどんどんどん小さくなっていった。

あまりに驚いたので、私は目を瞬き、擦り、「うんうん」というついでに頭をヘドバンのように降り、前に乗り出した。

女はそれを見て、私がかなり興味を持って話を聞いてくれていると思ったのか、興が乗ったように話を続けた。

私は、話なんてひとつも耳に入ってこず、最終的に、人間の首肩に乗ったピスタチオ大の頭が、懸命にペチャクチャと早口でなにかを話しているのを見ていた。

私は愕然と肩を落として、呆然としながら、ピスタチオの裂け目から繰り広げられる話に頷くだけになった。

 

帰りの電車の中で、私はそのピスタチオのSNSを全てブロックした。

ピスタチオと共通の友人で、まともな子たちにメールを送った。

「対面で話していたら、あの子の頭がピスタチオくらい小さくなっていく幻覚を見た。もう私、あの子ダメだと思う。SNSは全ブロックしたから、なにか聞かれても、私は死んだことにしてくれ」

 

それぞれから大ウケの返信が来て、「あれと1対1はダメだよ」と忠告も来た。

 

数ヶ月くらいあとに、謎の留守番電話があった。

「…なんで、無視するのォ…」

怖っ!!!誰!??

 

本当にびっくりしたが、どうやらうっかりピスタチオの電話の着拒を忘れていたのだ。しっかり着拒と、アドレスの削除をした。

しかし、すごい。正直、そこまで仲が良いつもりはなかったのに、自分が否定されるのは許しがたいのか、それにしても、ブロックされているのは明白なのに改めて留守電に吹き込む、そのメンタルの強さはいくら考察しても理解できない。

ピスタチオは相変わらず、元気らしい。メンヘラでメンタルが強い奴は、生命力が強い。よかったよかった。絶対に関わりたくないけど。

 

 

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

愛しています。