ちぃちゃんとあきちゃん
こんにちは。
こんばんは。
おはようございます。
flyingsapceshipと申します。
こちらでは好きなもの、きらいなもの、気になるもの、考えたことがあれば、私ならではの少ない語彙と拙い文章による書置きスタイルでお送りしています。
壱川ちぃちゃんと梶谷あきちゃんという、高校の同級生がいる。どちらも仮名だ。
私含め3人とも中学はバラバラで、高校1年で初めて同じクラスで会い、なんとなく今でも時々会ったり、連絡を取っている。
ちぃちゃんもあきちゃんも、贔屓目なしに、一般的に見ても、非常に個性的でパンチの効いた人間性をしている。
ちぃちゃんは、初めて見たときの印象は『不良の子』だ。
不良が嫌いな私は、教室で一目見て「あの子とは仲良くなれないだろうな」と思った。数日前まで中学生だった、高校の入学式当日にも関わらず、かなり明るい髪色で、制服のスカートは短く、ルーズソックスを履き、自己紹介の時「〜ッス」という喋り方だった。
『こいつ…どこ中だよ…』と思っていたら、私が部活で毎日通っていたとなりの中学のバレー部に所属していたという。
どうやらすれ違っていたことがあったらしく、「知ってる知ってる!見たことある!」と最初から距離を詰めてきた。
私は『となりの中学とか不良しかいないじゃん』と思っていたので、『不良の子』として対応した。今でもそうだ。
あきちゃんに関しては、明るい髪色をストレートロングに伸ばして、教室の1番後ろの席でスレンダーで長い脚を組んで、入学式当日からダルそうにしていた。
『だるいギャルだ』と思っていたら、自己紹介の中学の学校名が全部英語だった。あきちゃんは15歳までほとんどを海外で過ごしていたのだ。あの9.11の惨状の瞬間を、学校の窓からリアルタイムで見ていたらしい。
あきちゃんには、その帰国子女スキルを存分に活かした逸話がある。
あきちゃんは英語以外が全然出来なかった。
英語のみ、テストの学年での偏差値は75をキープしていたが、他が無残だった。
もともとそこまで話好きのタイプではないのかもしれないが、当時、あきちゃんは口数が少なめだった。
その理由が、ある時、明るみになった。
ちぃちゃんがあきちゃんの側で
「キビタニ!キビタニ!キビタニ!」
と腹を抱え、頭を前後に振ってケタケタ笑っていた。
私や他の友人は、「またわけのわからないことでちぃちゃんが騒いでる」くらいにしか思ってなかった。
しかし、ちぃちゃんが「見てよ!あきちゃんヤバイんだけど!」と主張してきた。あきちゃんは、黙って苦笑いしながら、ちぃちゃんが指差す先を見ている。
ちぃちゃんが指差していたのは、プリントのあきちゃんの名前が書かれている部分だった。
【 木 尾 八 あ き 】
合
イメージとしてはこんな配置だった。
左右に偏とつくりが分かれるものは、まったく独立しあい、上下も同じようにそれぞれ別ものの如くバランスをとって(?)いた。あと、微妙に間違ってもいた。
※仮名なのであくまでイメージだが。
あきちゃんはちぃちゃんがあまりに笑うので、「漢字よくわからん!漢字キモイもん」とわけのわからないキレ方をしていた。
ちぃちゃんはしばらく、あきちゃんを『キビタニ』と呼んでいた。
おそらく、あきちゃんが英語以外の教科を苦手としていたのは、そもそも日本語にまだ慣れていなかったのだと私は思った。それを平気でヤジるちぃちゃんにはややゾッとした。
またある時、あきちゃんが「財布が重たいから鞄が重たい」と言い始めたことがあった。私は、『あきちゃん痩せ細ってるし体力なさそうだもんな』と思った。
しかし、また、ちぃちゃんがあきちゃんの席の側で、頭を前後に振ってケタケタ笑い出した。
「あきちゃんヤバイんだけど!」
見ると、あきちゃんの机の上にはパンパンになったDiorのピンクの財布と、そこから溢れたような大量の1円玉とその他小銭があった。
ちぃちゃんがヒィヒィ笑いながら、「あきちゃんさぁ!アメリカじゃないんだから、なんでも紙のお金で払っちゃダメだよ!」と1円玉を数え始めた。
あまりに大量にあったため、私や他の友人も数えるのを手伝った。
全部で103枚くらいあった。
ただ、そういった帰国子女ギャップはあったものの、あきちゃんは基本的に物静かで、ちぃちゃんと比べると奇行は少なく、当時の私はあきちゃんは『やばいがまともなほう』と思っていた。
数年後、高校を卒業してからあきちゃんと会ったら「ゲームセンターに行きたい」「クレーンでとりたいものがある」と、あの『だるいギャル』から一変した意志の強さを感じ、私は怯んだが了承した。
空いている平日昼間のゲームセンターのなか、あきちゃんはクレーン機を吟味し、目当てを見つけたのか、突然早足で一台に駆け寄った。
物静かではあるが気迫めいたものを漂わせ、あきちゃんはすかさず財布から100円玉を、数える仕草もなく、コイン投入口に流し込んだ。あきちゃんの財布はスッキリしており、もう1円玉は詰まっていなかった。
あるのは、事前に両替していたのか、残り数枚の100円玉だ。
隣に私がいることなどすっかり忘れているのか、クレーン機の中のフィギュアを凝視しし、「あずにゃんっあずにゃんっ」と歌うようにつぶやいていた。
引いた。
あきちゃんの努力と財力で、2000円ちょっとであずにゃんは獲れた。
私は引いていたが、あきちゃんは嬉しそうだった。
さらに数日後、あきちゃんとちぃちゃんと私で行った、地元の小さな居酒屋で、ちぃちゃんがボトルキープした酒瓶を見て、あきちゃんが言った。
「(flyingspaceship)ちゃん、これにあずにゃん描いてっ」
私は「あずにゃん知らねぇよ!!!!!!」と言ったが、あきちゃんはすぐに携帯で画像を表示させ、「これ!これ、ボトルに書いて!」と私の日本語が通じない様子だった。
しかし、あまりにあきちゃんが楽しそうだったので、根が真面目な私はちゃんと書いた。酒瓶に絵を描いたのも、あずにゃんを描いたのも、それが最初で最後だ。
あきちゃんはその後、集まっていると時々、「まどマギは鬱展開」とか「たたかうようじょ」とかを言い出すようになったが、『だるいギャル』だった時より口数も増え、楽しそうだ。
ちなみにブラックニッカについて - 宇宙船と砂漠で足跡で、ブラックニッカを隠し持っていたのはちぃちゃんのほうだ。
ちぃちゃんは、矮小な悪事を繰り返しながらも、なぜか『悪いやつ』認定されないお得な奴だ。本来なら私のような根暗オタクからしたら嫉妬の対象だし、仲良くなかったら、絶対に仲良くなりたくないタイプだ。
あきちゃんのことを書いたら、意外と色々あったので、ちぃちゃんの悪事については追い追い書くことにする。
本日も読んでいただき、ありがとうございます。
愛しています。